週末の魔法使いと手品師

9月から3度目の3連休を迎えていますが、連休を見計らったように雨の日が続きます。昨日、今日はなんとか持ち堪えましたが、今日から明日にかけても相変わらずの雨に見舞われています。幸い今週は土日の練習には雨の影響がなかったものの寒暖差は激しいので、レースも近いことですから体調管理には気をつけていかなければなりません。

今月は私が思うように練習指導ができないことは以前からお伝えしているところですが、何かできることはないかと思い、国体を終えたばかりの彼に早速コーチングオファーを出しました。するとすぐに快く引き受けてくれ、私が不在の土曜の午前中に練習に参加してくれました。そして練習では、全日本新人を目指すダブルの鈴木、吉澤と一緒に乗ってくれ、一人ずつに直接指導をしてくれたようです。

今回のコーチングでは、あまり細かいことは注文つけず、見たまま、感じたままで伝えてくれれば、きっと二人にとっても大きな刺激になるだろうとは想像していましたが、結果は案の定でした。午後の練習を一目でも見ようと研修を終えてすぐにコースへ足を運び、緑に白十字のダブルスカルが漕いでいる姿を見て唖然としました。

これほどまでに変わるのか?というのが正直な感想で、どんな魔法を使ったのか、見違えるほどの艇の進みに驚きを隠せませんでした。そして、これはまさに“言うは易し”の自分の指導にも限界を感じてもいましたので、やはり実技での指導の重要性を感じずにはいられませんでした。と同時に「良し!これなら」というレースへの期待も込み上げてきたのです。

今回もコーチングを引き受けてくれた社会人選手にはこれまでも部員への指導や関わりをお願いしてきました。何より大学からボート競技をはじめトップレベルまでのし上がった選手だからこそ、初心者向けの教え方や考え方そのものを理解しており、上手く表現してくれます。それはきっと二人にも自然にすっと頭の中に入ってくるのだと思います。

彼には以前にもこうした学生への技術の還元はすごく価値があることだと伝え、社会人だからと一目置かれることより、身近に感じられるそんな選手であってほしいと一方的なお願いをしてきました。そんなことは私がわざわざ言わずとも彼自身はその人柄から多くの信頼を勝ち得ており、実力だけではない人間力も持ち合わせています。

そんな選手が乗って指導をしてくれるわけですから変化が起きないわけはないのです。以前にも何度か鏑木と一緒に乗って教えてくれたこともあり、劇的な変化と成長を見せてくれました。ですから今うちの部の成長があるのは本当に彼のおかげだと思っています。

実際に指導してもらった内容は企業秘密ですが笑、実践できているということは彼らが既に飲み込んだということなのでしょう。以前から私は陸からの指導や言葉の表現だけで伝えることには限界があると感じていますが、これは初心者に教える場合、特にそうだと感じます。感覚を伝えるには実技指導こそで、やはりこれがもっとも必要なのでしょう。

そして今週末はこれだけでは終わりません。昨日、同じように陸から初めてシングルに乗る淡路の姿を目にしました。週中になんとか乗れるようになったとは聞いていましたが、確かに艇には乗っていました。漕ぎはじめてまだ沈はしていないということなので、沈練習の効果は少なからずあったのかもしれません。

ただそれでも漕ぎ方そのものには違和感が多くありました。これは一方で、多くを望み過ぎているという見方もできるのですが、やはり全日本新人にこのまま向かうのには一抹の不安を覚えました。ですが、この場で直接伝えることは控え、その日はただただ見守ることにしたのです。

そして今日は改めて淡路指導に自らが乗り出しました。久しぶりにロースに履き替え、水の感触を楽しみながら、まずはダブルスカルであわせて漕いでみました。確かに以前に教えていた頃に比べれば、エイトでの経験、そして鏑木とのダブルでテクニック自体は上達していました。

ですが、思っていた通り、艇を進めるための根本的なことを見失い、ただただ艇の上で自らが動いて、オールを掻き出すという単純明快な負の状況に陥っていました。これを矯正することが今回の自分の使命であると、ある意味、昨日の鈴木、吉澤への魔法使いの指導でこちらも火が点いていました。ダブルスカルでは、再度基本的なことを伝えた上で、今度はシングルスカルへ乗り換え、並漕しながら指導をしました。(実に1年半ぶりにもなるシングルですが、意外と漕げるものなのですよね)

ダブルスカルで漕ぐ時は目の前で動きを捉え、水の感覚など、感じ取れることはあります。それでも距離感が近過ぎて、見えないことも多く存在します。これは遠すぎる陸も然りです。程よい距離感で一つひとつの細かな点を見られるのがシングルスカルでの並漕です。

そもそもモーターなんかがあるとこうして近く、ほど良い距離から指導できるのでしょうけど、それを持ち合わせていない当部でできる唯一の方法がこれです。まぁある意味、私の専売特許でもあるわけですが、淡路の艇の右斜め後ろから並漕し続け、艇のバランスを取るとはどういうことかを延々と近距離から伝え続けました。

その結果、恐らく淡路にも何かしらのヒントを与えられたことでしょう。陸に上がった際に鏑木から見違えるほどよくなったと報告があり、周りから見ても一目瞭然であったようなので、魔法使いにはなれなくても、手品師くらいにはなれたかもしれません笑(おかげでまた腰痛を発症しそうではありますが。)

鈴木、吉澤にしろ淡路にしろ今がちょうど伸び盛りなのでしょう。聞いたことをすぐに実践できる飲み込みの早さも大事な要素です。もちろん新人戦という目先の目標があるからこそのモチベーションも関係していると思います。それでもこれが実りの秋となれば、来季にも希望が持てるというものです。

このようにこの週末は彼らにとっても良い経験になったことでしょう。ただ心残りなのはTAの練習時間が取れなかったことにありますが、それはまたの機会で計画的に行っていきます。

また今日はたまたまなのか、青学OBを名乗る方が突如現れました。名前は伺ったことがあるものの実際にお会いするのは初めてで、青学のブレードを見て声をかけてくれ、今の様子を伝えると喜んでおられました。

同時に多くの方へ発信しているつもりでありながら、まだ部の現況や私の存在含め知らない方もいるのが実態のようですから更なる飛躍で多くの方に注目し、応援してもらえるよう精進せねばと思った週末の出来事でした。

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