先週末、東日本新人選手権が戸田ボートコースにて開催されました。
当部でただ1艇の出漕となった飯尾、白川のダブルスカルは見事3位入賞を果たし、当部としては今季4つめのメダルを獲得したのです。
新人戦と言えどもシングルスカルよりダブルスカルの方が出漕数も多かったため、戦前はどうなることかと不安もありました。
ですが、ふたを開けてみれば堂々の3位でしたから、インカレを断念したものの、その後、二人がやってきたことが、しっかりと実を結んだと言えるのでしょう。
そんな二日間の大会を振り返ってみたいと思います。
まず迎えた初日の予選。久々のレースとあって多少の緊張はあったようですが、最終組となった予選では安定したレース運びを見せくれ、堂々の1位フィニッシュでのゴールでした。
またレースでは他艇に少し差を付けていたのもあって、ゴール後にすぐに船台へ戻ろうと漕ぎだす二人に陸から制止を促したわけですが、彼らからすればその意味が理解できず不思議な表情を浮かべていました。
そうです、審判艇による白旗が上がってからのレース成立ということすらきちんと理解できていなかったのです。
本来、1年生であればこの新人戦が本格的なデビュー戦になることが多いので、それこそ回漕レーンやアップの仕方、レースのあれやこれやを教える機会にもなるはずが、今季すでに何度もレース経験をしている白川にはそれを言う必要がありませんでした。
ですから、そのあたりも例年とは少し違い、ましてや予選を1位で上がってくるという経験は1年生ではあまりできないものですから無理もなかったのかもしれません。
そして予選を終えてみてのタイムでは、全体の3番手につけており、本人らが目標と掲げたメダル圏内であることも物語っていました。
もちろんレースですから実際に並べてみないと結果は分かりませんが、少なくとも決勝レースで勝負できるだけの手応えはこの予選を終えてみて、うすうすと感じていたのです。
それはインカレで当部が課題としていた前半の立ち遅れであるスタートのダッシュ力の違いに見られました。
1000mレースでは特に前半勝負が鉄則となるため、置いて行かれればあれよあれよで逃げ切られてしまうことが多々あります。
その点、二人は前半の大事さを理解しており、スタートからしっかりとしたハイレートで飛び出し、前半から攻めるというレース展開をものにしていたのです。
午後に行われた準決勝。こちらは3位までが決勝進出ということもあって、予選よりは気持ちも楽にレースを迎えられました。
ただ、出艇の際に白川が一言ぼそっとつぶやいたのです。「誰も応援こないって寂しいですね」と。
そうです。このレースではTAも岸蹴りに間に合わず、二人を見送ったのは淡路と私の二人だったのです。
確かにここ数年、大応援団が当たり前になっていたことを考えると部員数が減ったのもありますが、妙に寂しく感じるのも無理はないでしょう。
それでもそんな影響を微塵にも感じさせず、レースでも2着でしっかりと勝ち上がり、見事に決勝進出を決めたのでした。
ただここで一つ気がかりだったのは、午後特有の逆風が襲い、時計が大幅にかかったことです。
そしてそれが何を意味するかと言えば、経験が浅い二人だからこそハンドルテクニックも不十分なため、逆風によって腕の握力を大幅に消耗していたのです。
翌日の決勝戦でも同じような時間帯であることから同じようなコースコンディションが予想されました。
もちろん条件は皆、同じため必ずしも当部のクルーだけがハンデを背負うわけではないのですが、失われた握力で思わぬアクシデントの発生を生むかもしれない、そんな心配もあったのです。
ただこればかりは一日二日でどうにかなる問題ではないので、そこはもう風が吹かないことを我々としても祈るしかない、そんな思いでもいたのです。
そして迎えた翌日の決勝戦。天は二人に味方したのです。
心配された風はピタッとおさまりました。これはお昼からレース時間にかけて時折見せる雨が好影響したものでしょう。
実際にレース間際は多少追い風で流れるコンディションでまさに絶好でもありました。
またこの日は昨日とは打って変わって、大応援団がレースの送り出してくれていたのも二人には追い風となったのです。
レースに向けてすべての準備は整い、我々も気持ちとしても安心して見ることができました。
そしてスタートの合図とともに抜群のダッシュ力を見せ、上位2艇にしっかりと付いていくレース展開で、250m付近では4位以下に1艇身程度の差を付けたのです。
ここから中盤、終盤も落ちることなく、いよいよスパートを迎え更に回転数があがるのですが、これが裏目に出たのか、少しフィニッシュまわりでオールが水に食われそうなシーンを何度か目にするようになりました。
まさか!?と思った矢先、残り50mもない地点で恐れていた腹切りを見せて艇を止めてしまったのです。
それでもハンドルを話すことなく、すぐに立て直し、数本だけ漕ぎなんとかゴールをしたものの4位艇とは1秒ない差に迫られていたのですから、さすがにヒヤッとしました。
それこそ伴チャリしていた私と淡路にはしっかりと3位でフィニッシュする姿が見えてもいましたが、ゴールより少し離れて観戦していた応援団からは3位か4位か分からないほどの接戦に見えていたようです。
それは後に知った余談でもあるのですが、レース後の二人のガッツポーズは3位を死守してメダルを獲得した喜びを表現したものの、応援団からは4位に沈んだ悔しさのリアクションに見えていたそうなのです。
3位でガッツポーズというのは不思議に思われるかもしれませんが、この日の決勝で並んでいた上位2艇は明らかに格上でした。
これはさすがに現状の力差ではどうにかなるものでもなく、むしろこれらを除いてメダルを獲得することが最大の目標であり、至上命題でもありました。
よって、二人は公言通りにそれを達成し、インカレ断念という無念を見事に晴らしたわけです。
今大会、あまり二人には細かいことは言わず、レースを見守りました。
それでも自分たちがレース相手を分析し、自信をもって臨んでいたことも印象的でした。
目標を成し遂げるためにはこうした準備が何より大事になりますが、二人はここに挑むまでの期間でしっかりと練習してきていたことが成果として表れたのです。
決勝前、白川には一言だけ伝えました。これを来年のインカレの決勝と思い、しっかりと勝ち切ってこいと。
結果、見事にそれを成し遂げてくるのですから大したものです。
同じく飯尾についても1年前のこのレースで予選で敗退し、C決勝3位という屈辱から見事に1年で成長を見せてくれました。
たった1年半の競技経験ながら、こちらの思う以上の成長を見せ、ひたむきにやってきたことがこの勝利につながったのだと思います。
これはある意味でも、来季に向けての取り組みや思想と重なることが大いにありました。
インカレでメダルを獲る!そのために何をして、どう行動するか、何かしらのヒントを得る機会にもなったことでしょう。
新体制を迎えて始動したボート部ですが、ここで幸先のいいスタートを切ることができました。
次なる全日本新人は小艇ともなれば強豪揃いのため、そう甘くはありませんが、現状でどこまで戦うことができるか、楽しみに待ちたいと思います。
最後に、決勝レースでは多くの方にご参加いただきましたこと心より感謝申し上げます。
インカレを終えて引退した4年生もそろって顔を見せてくれました。これからも皆さんの応援が頼りであり、力になります。これからもどうぞ温かく部員らを見守りください。
コメント