その思いを乗せて

インカレ開幕までのカウントダウンがはじまっています。

先週は台風襲来のニュースに振り回されましたが、関東地方は鉄道の計画運休こそあったものの、さほど大きな影響はありませんでした。

とは言え、台風によって発達した雨雲が相当な雨量をもたらしたこともあり、現在、戸田のボートコースの水位はかなり上昇しています。

今週に迫ったインカレ開催に向けてコースの整備が必要なようですから関係者には本当に頭が下がる思いです。

ただただ当たり前のようにインカレが開催されるわけでなく、こうした裏方で準備してくれている方への感謝の気持ちを忘れてはいけませんね。

さて、インカレ前の最後の週末となった土日。

4年生となる鈴木や吉澤にとっても最後の週末になるということもあって、私自身も土日ともフルで参加してまいりました。

中でも印象深かったのは日曜日の練習です。

午前中はインカレ前の一つのイベントとして当初より予定していた公式エルゴ測定を実施したのですが、測定前の段階で憂鬱な表情や、意気消沈した雰囲気が漂っていた通りの結果で、ここでは白川を除いては上級生らは記録を更新することができませんでした。

それもインカレに代表で出場するダブルスカルの二人がレコードとは程遠いスコアを出しているので今の調子自体がこれに表れているのも感じます。

それでも今更あがいてもどうしようもありません。

残り数日で出来ることに気持ちを切り替え、水上でのパフォーマンスを上げていく他ありませんので、後は二人を信じるしかないのです。

と、こんな状況の中でも1年生の白川はまだ1年の夏だというこの時期に前回から更に大幅にタイムを短縮し、それこそ淡路の持つ記録に迫るかのような勢いを見せてくれました。

たった一人の1年生ながら本当にとんでもない大型ルーキーに感心しています。

彼のすごさは力強いストロークを楽そうに悠々と漕げることにあります。

もちろんこれは持ち前の体重がプラスに働いているのもありますが、先輩らが気持ちも含めて重そうに引いているエルゴを前半から快調に飛ばして貯金を作り、後半も安定させた漕ぎ方を見せるので、その姿はまるで経験者のそれのようにも感じるのです。

もちろんこうした漕ぎ方だけに止まらず、気持ちの作り方も堂々たるもので、自身が目標とするタイムを出すためのプランも綿密で、それを他の練習でも実践して、この測定に挑めていることにも見習うべきポイントは多くありました。

この夏練に掲げたコンスタントレート35で漕ぎ切るという私のミッションを一人だけ実践しているわけですから、これを見た先輩らもさすがに大いに刺激を受けたようです。

 

そして、午前の測定には参加できなかったものの、4年生の吉澤が午後一番の練習で皆が見守る中、最後のエルゴ測定を実施しました。

今回、クォドルプルは残念ながら棄権することとなり、彼のインカレ出場という夢は消えてしまいました。

もちろんここに至る過程の中で、本人も体調不良の克服と向き合いつつも練習に参加できないこともしばしばありました。

夏練が開始して以降、こうした問題点にも皆が本音で向き合ってきたここ数週間だったと思います。

インカレへの道が途絶えながらも、吉澤本人はこの日の測定のために練習を続けてきました。

それは個人としての目標達成もありますが、何よりチームのために自分ができることをという思いを強く持ってくれてもいたからです。

先週、オンラインミーティングでその言葉を聞いて、選手だけでなく、我々スタッフ陣も本当に嬉しく思い、同時にインカレに出場させてやれない悔しさと責任の重さを痛感しました。

ですから最後の測定は結果が出なくても必ず見届けてやりたい、昨日はそんな思いがあったのです。

吉澤本人も気持ちを高めながらアップを淡々とこなしていました。その姿には何か今までにない気迫と覚悟すら感じ取れていました。

そしていざ、測定が始まるわけですが、その姿は私が覚えている限りでも彼のベストパフォーマンスと思えるほどの漕ぎを見せてくれたのです。

それは数字にもしっかりと表れており、特に中盤のLAP維持には、なんとか目標達成のためにここを踏ん張るんだという強い意思すら感じました。

迎えた終盤。本当に苦しい表情を浮かべながらも、なんとか最後まで漕ぎ切った姿はまさに『ROW OUT』という言葉そのものだったでしょう。

結果、タイムとしては自身が掲げた目標には残念ながら到達しなかったものの、自身の持つレコードを最後の最後にしっかりと更新して見せたのです。

そして漕ぎ終わった後には、いつも静かな吉澤が悔しさを声に出し、苦しかったこと、そして目標達成できなかったことの悔しさを床を叩きながら表現していました。

これぞ吉澤の生きざまと言わんばかりの雄姿を最後に見ることができ本当に胸が熱くなりました。

また、これを見た部員らも何やら今までのモヤモヤが吹っ飛び、部として状況がこれを機に好転したかのように映ったのは私の思い違いだったでしょうか。

 

ここに至るまで、いえ、最近の部の状況は決して良くないものでした。

それでもこの吉澤の雄姿は皆の今の現況を吹き飛ばすほどの快漕であり、自信と勇気を与えてくれたに違いありません。

その吉澤の思いを乗せて、代表クルーにインカレに挑んでほしい、そう願っています。

まだまだ終わりではありません。ボート部全員で戦うインカレまであと数日。

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