レース後、足早にボートコースを去って、今はビール片手に新幹線の中からこのブログを書いています。こうして一人、祝杯気分になったのも部員らの本日のレースのおかげでハードな一日ながらその疲れも吹っ飛ぶような爽快な気分で実家に向かっています。
来週は週明けに四国出張があり、ついでに岡山を経由するため今晩、帰路につきました。日曜日に下りの新幹線に乗るなんてよほどの悪い出来事がない限りないものですが、今回はそんなこともなく、一段と格別な思いです。
先ほど閉幕した東日本夏季競漕はダブルスカル、そして舵手付きクォドルプルの2種目でともに準優勝を成し遂げました。そうです、出漕した全員が銀メダルを手にしたのです。メダルの色は2番目の銀ですが、そもそも淡路を除けば全員が初めてのメダルですから、その喜びも一塩でしょう。
また当部はこの東日本系の大会においては3位に甘んじることも多かったわけですから、こうして今回銀色のメダルを獲得したのは部としても大きな成長だったと言えるでしょう。
さて、そんな部員たちのこの日の軌跡を簡単に振り返ってみたいと思います。
天候は曇り、予報では午後から雨、そして強風予報まで出ていたものの決勝レースが終わる最後まで大きな影響はありませんでした。むしろこの時期にしては珍しいくらいの順風で、かつ波が立たないコンディションは絶好とも言えるものでした。
まず鈴木、淡路のダブルスカルです。結果的に社会人クルーに優勝を譲ったものの、こちらは先週開催された全日本ローイング選手権に出漕して結果を残していたクルーともあって、さすがに力の差をまざまざと見せつけられました。
それでも他の社会人、大学クルーの中では最先着を果たしたわけですから、やむを得ず全日本選手権を棄権し、目標をこちらに切り替えた中で、しっかりと結果で応えてくれました。
予選では定番となるA組の1レーンを引き当て、コースコンディションからも好タイムを期待したわけですが、発艇前に他クルーの艇故障により、レース時間を繰り下げられる惨事となりました。予定していた時間から20分後ろ倒しになるのはメンタル面にも多少なりとも影響はあったかもしれません。
それでも並べているクルーすべてが同じ状況であれば言い訳もできません。レースではスタートで出遅れ、250m付近を過ぎるまで横一線の大混戦でした。ここからが真骨頂と思いきや、前を行く隣のレーンの医科歯科大との差を詰めることなく、後半は逆に水をあけられる敗戦となったのでした。
組1位は無条件で決勝Aとなるものの、タイムで決勝に進出するには上位2席しかない状況というのも試練でした。特にこの日の順風であれば吹き方によって組の違いによる有利不利が少なからず発生するもの。そこは本当に神に祈るしかありませんでした。
思い返してみれば鈴木の入部以降、こうしたタイム結果を待つことは意外と多く経験しています。そしてこういったときは、こちらの心配をよそに大体は願いが通じることが多いのです。それは彼がラッキーボーイであるが所以なのかもしれません笑
もちろん私自身は自身が計測したタイムから、通過可能であることも大体悟っていたわけですが、当の本人らはこんなところで負けていられない、そんな気持ちで結果を待っていたことでしょう。
そして発表された結果は気付けば全体の3番目のタイムで、見事に決勝進出を決めたのです。但し、タイムだけを見れば決勝6クルーのタイム差は小さく、大混戦となることが予想されました。
その決勝に挑むにあたっては、先ほどのレースで負けた相手にも決して負けることはないので自信をもって挑むこと。そしてゴール後のガッツポーズを楽しみにしていると伝え、レースに送り出しました。
恐らくこれだけのタイム差であればメンタル面も問われます。弱気になれば他に食われてしまうのが決勝という舞台でもあるのです。それでも二人は幸いにして、これまで決勝の舞台での経験を積み重ね、そこで勝負することをこれまでも経験してきていたのです。
いざ、レースが始まってみると、またしても出遅れ気味な前半ながら、なんとか好位置をキープし、500mを通過します。この時の着順は4番手でした。私自身、この時点で彼らが後半あまり得意ではないという印象から少し弱気になってしまいました。
それでも、ここから彼らは真骨頂を見せてくれたのです。750mを過ぎたあたりで3番手の1艇を競り落とし、残るは予選で敗れた医科歯科大すら射程圏内にありました。そこからまた過去にないスパートピッチを見せてくれ、残り100mでついには逆転し、最後までそのリードを譲ることなく2位でフィニッシュしたのです。
特に後半残り300mからのアタックは見ているこちらを熱くしてくれました。私も声が枯れるくらいに淡路の名前を連呼していたので、それが届いたかはさておき、後半のあの力強さ自体が今の彼らの力なのだと改めて知ることができたのです。
そしてゴール後には着順は2位と言えど、すぐさま二人してガッツポーズを決めていたので、この瞬間は私も同じように陸で喜びを表現しました。1位という最高の結果ではないものの、今の彼らにとっては最良の結果がまさにこの準優勝だったのですから。
そして、残りの部員らが揃って参加したのが舵手付きクォドルプルでした。この東日本夏季競漕はなぜかこの特殊な種目が毎年用意されています。この種目がある目的は知る由もありませんが、当部は今回あえてこの種目に挑む理由が2つありました。
戸田レガッタを終え、残り部員らにそれを伝えたわけですが、一つは唯一の1年生である白川にレース経験を早期にさせる大会とすること。もう一つは東日本級の大会で全員に戦績を残すことです。この思いを吉澤をはじめ上級生らに伝えました。
はじめは戸惑いもあったかもしれません。それでも4人で話し合った結果、これに挑むという結論を後日もらいました。そして出場するにあたっては、個々にそれぞれが課題を乗り越えることもあえて試練として課しました。
これは練習での技術云々ではなく、個々の今の弱みもクルーボートとして行動することで乗り越えてほしいという思いを込めたのです。とは言え、こちらが伝えた練習計画の明確化や練習内容について不満は残ったものの、レースに仕上げるという一つの目的は達成してくれました。
そして迎えた今日のレース。舵手にはTAである智帆ちゃんが名乗り出てくれ、なんとか5人で出漕することができたのです。なんの目的があるのかこちらも不明な予備レースは3位でフィニッシュし、決勝でも3位以内はある程度、皆が期待していたことでしょう。
むしろ大きなミスさえなければそれ以上も望める手応えすらあったでしょうから、決勝レースではミスにつながるラフコンディションだけは避けたかったのが本音です。そして最終のオオトリとなったこの決勝レース、ダブルスカルの時と同様に大きな変化もなく、静かにスタートしたのです。
スタートは予備レース同様にあまり慌てることなく漕ぎ始め、レートに頼らず水中だけで艇を進めるというプラン通りの内容で500m付近ではこちらも予備レースで敗れたクルーと一進一退の攻防を繰り広げていました。
こうなれば先ほどのダブルスカルと同じで、あとはラストスパートで頭一つ抜け出してくれればという思いで見守りましたが、最後まで慌てることなく力強い漕ぎが実ったか、残り200m付近で2位に浮上し、そのままミスなくフィニッシュすることができたのです。
そして、逆にダブルスカルと対照的だったのは、誰一人ゴール後にガッツポーズを見せなかったことです。これはある意味、安堵の気持ちが強かったからなのかもしれません。それでも出てみるまでは、どんなレースになるかも分からない中でなんとか2着し、全員が晴れてメダルを獲得したのですから当初の目的を達成できたことは喜ばしいことでした。
両クルーとも表彰式に参加し、賞状やメダルを手にした姿は、さすがに立派なボート選手のそれでしたし、表彰式後には私自ら進んで皆と握手を交わしました。『良かった、本当にお疲れさま、そしてありがとう』という思いを込めて。
こうして今、私は気分よくブログを書かせてもらっています。それでも決してこの結果に浮かれすぎることなく、最後のミーティングであえてこの言葉を伝えました
「勝って兜の緒を締めよ」
もちろん、今日はこの勝利に思いっきり喜んでいいのですが、明日からはまた次なる目標に向けて気持ちを変えていかなければいけないのです。
なぜなら私たちが目指すべきところはこの舞台ではないからです。人は結果に満足すると成長を自ら止めてしまう生き物です。だからこそ、勝ったときこそ厳しい言葉も必要なのだという思いを皆に伝えました。
それは監督として必要なことだからです。でも今日の結果は皆と同じくらい私自身も大いに喜んでいます。なにより、応援にきていただいた保護者方の嬉しそうな表情、そして部員らの笑顔。これはもう監督冥利に尽きるものでしたから。
本当におめでとうございます。そしてありがとうございます。
感動はこうして関わる人が多いからこそ生まれるのだと改めて感じる今日一日でした。
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