勝てば天国、負ければ地獄、運命の時を待つ

台風襲来が予想されながらも昨日に引き続き晴天に恵まれた全日本大学ローイング選手権の二日目。

当部は出場2種目となるシングルスカル、ダブルスカルともに本日の敗者復活戦にまわることとなりましたが、今年から新たに加わった準々決勝進出にはどちらの種目も3位まで通過と寛大な措置が取られていました。

よって、1位のみしか上がれない従来方式に比べ、選手らにも幾分気持ちの余裕が感じられ、見る側も安心感をもって今日のレースに臨めたのが正直なところでした。

シングルスカルで出漕する鈴木は5艇レースでタイムから見れば4番目と厳しい戦いを強いられることは明白でしたので、そのプレッシャーからか出艇していく際にも表情に緊張感を滲ませていました。

それでも昨日のタイムは返し波の影響によるもので喰らい付いていけば逆転可能と激励込めて送り出し、実際にレーススタートしたところ果敢な攻めが感じられ、良い立ち上がりで最初の500mを通過したのでした。

そこからは3位争いを繰り広げ、圏内に捉えながらも1000m通過付近では徐々に水を開けられる厳しいレース展開にさすがにこのタイム差の逆転は厳しいかと諦めたその時でした。

優勝候補筆頭の1位の選手にアクシデントが発生していたことに気づきました。

ここはダントツ通過間違いないと見て、視界にすら入れていなかった選手であるため一瞬何が起きているのか目を疑いましたが、これは鈴木にもチャンス到来と気持ちを込めて、あとはひたすらゴールまで3位死守と言わんばかりに声援を送りました。

当の本人はなにが起きているのかまったく分からなかったようですが、前半の頑張りからか、徐々に力強さが欠けて、後半ラップは随分と落ち込んだもののなんとか最後まで3位を死守し、見事に準々決勝進出を決めてくれたのでした。

もちろんコースでは優勝候補筆頭の選手のアクシデントにどよめきを隠せずにいましたが、それでも自らの実力と運で引き寄せた結果の勝ち上がりですから胸を張れるものだとレース後には鈴木と固い握手を交わしました。

ボート競技の中でこうしたアクシデントはつきものです。どんなに優れた選手であっても一度こうした状況に陥ると修復はさすがに厳しく、今回も同様でした。

レースはいつ、何が起こるかわからない。だからこそ最後まで全力でゴールすることが求められるのだと肝に銘じ、複雑な勝利ながら静かにその喜びを噛み締めたのでした。

そして迎えたダブルスカルの敗者復活戦。タイムから考えれば3位以上は順当、あとはいかにタイムを取って明日の準々決勝組み合わせにつなげるか、焦点はそこでした。

それでも前日の予選の反省を生かし、今日こそはという思いもあったのか、少し緊張した面持ちにも映りましたが、レースに向かう二人の姿にはもはや安心感すらありました。

発艇前、アナウンスがよく聞き取れずにいましたが、スタートデッキにランプが点灯していることでイエローカードをもらったことがわかりました。

先ほどのシングルのアクシデントもあり、まずは無事にスタートしてゴールしてほしい、そんな思いが先行しましたが、無事にスタート決めた鏑木、淡路は今日はそれなりの飛び出しを見せ、3番手で目の前を通過していきました。

1位筆頭の明治大学には昨日のタイム差から及ばないことが濃厚ながらなんとか2位を死守し、上位タイムを取ることが今回の大きな目的でもありました。

ですが、2番手をいく熊本大に終始先手を取られる厳しい展開に、若干の焦りもあったのか、途中の刻みで差を詰めながらも逆転することができずにこの日も後半勝負となりました。

早めスパートで捉えようとかかるも、相手もそれをよく見て突き放すわけですから終始一進一退の攻防のような展開に苦しみました。そしてそれは最後まで順位が入れ替わることはありませんでした。

3位で無事に通過したことを安堵すると同時に、ここで思った成果(結果)をあげられなかったことをどう捉えているのか、確認する時間もなく、私はそのまま午後の仕事に向かったのです。

恐らく後悔の念、そして出しきれずに終えた今日のレースへの反省はあるだろうなと思いつつ、LINEで二人にメッセージを送るとやはり後悔の言葉がまず先に返ってきました。

それでも結果を変えることはできない、だからこそ気持ちを変えて、次に生かすことしかできないのだと当たり前の言葉だけを伝え、明日以降、気持ちを切り替えて、本来の良さを発揮してくれることに期待するしかありませんでした。

そんな矢先、明日の午前中のレースの中止が決まり、実施についても明日以降持ち越しの判断となりました。

思わぬ台風の襲来により、この先のレース状況が不明ですが、この時点で両クルーとも可能性を残しています。

準々決勝が本当の山場となるわけですから、ここですべてを出し切るしかありません。勝てば天国、負ければ地獄、そんな運命の一戦を前に、選手らも、そして我々関係者らも今は静かにその時を待つしかないのです。

ですが、この緊張感こそ楽しみ、チャンスをものにするためにも、どれだけ強い気持ちでレースに向けて作っていくか、それこそが分かれ目なんだと思います。これまでやってきたことのすべてを出し切る、もちろん他のクルーも同様の覚悟をもって臨んでくるでしょう。

どちらの気持ちが勝るのか、こうしたレースに自信をもって挑むために普段の練習一つひとつが大事になってくるのです。どこよりも、だれよりも耐えてきた、そんな自負があればきっと乗り越えられるものなのですから。

まさに勝負の時が刻一刻と近づいてきているのです。

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