雨のち晴れの一日

熱き闘いを繰り広げた2023年の全日本大学ローイング選手権を終えました。

正確に言うならば、青山学院大学ボート部にとっての2023年の挑戦が昨日をもって終了したということで、この第50回の記念大会は本日の最終日を残しています。

我々はここを最大目標として、最終日を目指し、今年こその思いで挑みましたが、それは残念ながら叶えることができませんでした。

それでも昨日、出漕したシングル、ダブルの両クルーが力の限り精一杯戦ってくれたこと、またレース後には当部の関係者が集い、これまでにない雰囲気の中で全体のミーティングをできたこと、いずれも胸に深く刻まれる感慨深い一日となりました。

素晴らしい学生たちに囲まれ、こうした状況に身を置けること。そして、多くの人に支えられながら、部が年々成長している姿にただただ感動し、監督としての立場でここに居られること、この監督人生に改めて幸せを感じました。

関係者の皆さま、本当にありがとうございました。まず感謝の気持ちを表したく、御礼を述べさせていただきます。

 

さて、昨日を振り返る前に、まずは先日の私のこのブログでの拙い投稿を多くの方に読んでいただけたようで、こちらもこの場をお借りして心から御礼申し上げます。

結城さんの拡散効果もあってのようですが、この日だけで、投稿を見た、内容に賛同した、などの多くの関係者に声を掛けられ、大変嬉しく、そしてありがたく思っております。

それは内容どうこうではなく、数年前までは青山学院大学ボート部の存在すら知られていなかった時代からこうして少しはこの部に関心をもってもらえていることもあるのかもしれません。

もちろん、それは選手らの頑張り、努力があってのものですから、ここまで共に築き上げてきた証なんだとも思っています。

監督就任当初、戸田の監督会に顔を出し、自己紹介の機会を頂いた際、壇上に上がり私はこう述べました。

「長らく活動停止した青山学院大学ボート部を再生するために監督に就任しました。部員すらいない状況ながら、まずはインカレに出漕することを目標に頑張りますので、もし青学のブレードを見かけた際は是非応援してやってください」と。

これは意図的に謙虚な姿勢を示したのではなく、自身の大学以外にも互いに応援し合えるようなボート界になるため、そんなチームを目指したチーム作りをするための自身に対しての宣戦布告でもありました。

もちろん勝つこと、勝ちに拘ること、勝負事では必要なことですが、それ以上に大切なものを得られる部にしていきたい、そんな思いを込めてもいました。

数年後、我々はインカレに出漕もし、記録の上では戻ってきたのですが、やはり結果が伴わないことで、どこか疎外感を感じていたのも正直な気持ちです。

青学がボート界に帰ってきた、そう思ってもらえるにはやはり存在感を示すことも必要なのだと、今のチーム作りに着手し、4年間かけて目にみえるかたちでそれがあらわれてきました。

それは同時に戦績だけでなく、多くの大学、関係者に注目され、互いに応援される関係作りを部員らも率先して行ってくれたからこそ今があるのだと思っています。

こうしたさまざまな思いを感じる大会であったこと、それが最も印象的でもありました。

 

さて、また随分と前置きが長くなりましたが、そんな当部の主役である選手らは、前日に決定された順位決定戦を今大会最終レースとして挑みました。

当日の朝は予報にもない小雨がチラつき、一向に止む気配すらありませんでした。

これが選手らの悲しみの声なのか、そう思いながら、私自身はまだやりきれない思いを抱えてはおりましたが、集合時にコースに顔をそろえた清々しい選手らの表情を見て、むしろこちらが勇気をもらい、気持ちを切り替えることができたのですから。

そんな中、順位決定戦E組に出場した鈴木はもらったチャンスながら来年につながるレースをと送り出し、それに漕ぎでも応えてもくれました。

結果は最下位、それでも2000mを予選を通じて3本漕ぎ、日に日に成長していくレース内容や前向きな姿勢を逞しく思い、また上位との差をこれからどう詰めていくかなど、本当の意味での課題を今大会で気づくことができたのだと思います。

最後は笑って大会を終え、その晴れやかな表情を来年は更にいいものにしてくれる、そんな期待をもつこともできました。残り1年、更にチームを進化させるためのキーマンとして躍進してくれることを楽しみにしたいと思います。

一方、ダブルスカルの鏑木、淡路についても昨日のこちらのメッセージを理解していたのか、この最後のレースでやることは一つと言わんばかりの勝負師の顔つきをしていたので、こちらも何の心配もいりませんでした。

むしろそれ以上にかける言葉も見当たらず、今大会で一番いいレースをしてこい、それだけを願い、出艇していく姿を見届けました。

実際のレースではスタートこそ並漕と見えたものの250m付近からすべての艇に先手を奪われ、今回もまた追いかける厳しい展開を強いられました。

これはやはり上位とのレースでは前半置いていかれるという課題が顕著にあらわれるものですが、そこはもう割り切りも必要でした。

500m通過、そして1000m通過と中々詰まらないこの差にさすがに厳しいかと顔を歪めますが、それでも彼らは一切の気持ちを切らすことなく、1500m通過後に再びエンジンがかかり、3位、2位と一とつずつ着順をあげていくのです。

私もこの日ばかりはと1レーンの二人にも届くように彼らに終始声援を送り続け、それが聞こえたかどうかは定かではありませんが、残り250mスパートでは更に回転を上げ、ほぼ同時と言えるほどゴールブザーでフィニッシュしました。

結果、最後のレースで1着とはならなかったものの、後半の追い上げは本当に目を見張るものがあり、まさに20年前に私自身が得意としていた後半型レースを思い出していました。

意図してそう作り上げたわけではなく、最後の最後まで前半勝負をできるクルーに仕上げられなかったのは私の反省ですが、それでもこの戦法でよくぞここまで戦ってくれたと精一杯褒めてやりたいと思えるものでした。

船台にあがってきた二人を出迎え、開口一番でナイスレースと声をかけ、これが最後となった鏑木に4年間お疲れ様、そしてありがとうという思いを込めて握手を交わしました。

本人たちもこのレースに後悔はなく、すべてを出し切った、これまでで一番のレースだったと口にしたのですから、結果に関わらず熱いものが込み上げてくるのを抑えるのも必死でした。

そして不思議なことにこの日、このレースを終えた途端に、雨も完全に上がり、晴れ間も見えてきたのですから、この日の天気はそんな我々の気持ちを象徴したものだったのかもしれません。

ボート部にとってもそうです。雨、曇りがと続いたとしても必ず晴れの日は訪れます。私のボート人生もまさにそうでしたから、ここからまた歩み出そうと決意新たに誓うのでした。

これが昨日、行われたレース、そしてこの日一日の出来事です。

その後のミーティングやこれから先のこと、また結城さんと語り明かした夜の会など、ここに書ききれないことも多々ありますが、それはまた改めてにしたいと思います。

インカレ最終日は本日まだまだ続きます。決勝レースを見て、夜には今度は再び部員らと打ち上げを開催しますので、少し時間をあけて振り返りの機会をもちたいと思いますので、楽しみにしていてください。

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